技術解説

要件が曖昧なときの進め方|ヒアリングからMVPの切り方まで

やりたいことはあるのに仕様が固まらない——そんな状態でも、発注前に決める最小セットとヒアリングの順番、MVPの切り方がわかると手戻りが減ります。図で整理しました。

この記事でわかること

  • 要件が曖昧でも、発注前に決めるべき最小セットがわかる
  • ヒアリングで聞く順番(目的→業務→例外→権限)がわかる
  • MVPの切り方と、後回しにしてよいこと/いけないことがわかる

執筆

藤原 寿暉斗

CTO

技術全般を統括。Webシステム開発からRAG・LLM統合まで、先端技術を実務に落とし込むアーキテクチャ設計を担う。

なぜ「全部決まってから」は危ないか

「要件が全部固まってから発注したい」は自然な気持ちです。ただ、現場の業務は使ってみないと見えない例外が多く、机上で全部決めきるとスタートが遅れたり、作ってから「違う」となりやすいです。

大切なのは、曖昧さをゼロにすることではなく、「何を先に決めて、どこまでを初回にするか」を共有することです。

全部決めてから着手 / 小さく決めて検証

全部決まってから

着手まで時間がかかる
例外が後から噴き出す
作ってから認識ずれ

小さく決めて検証

目的と範囲は先に固定
現場で使いながら精度を上げる
手戻りが限定される

発注前に決める最小セット

画面の色や細かい項目名まで決まっていなくても構いません。次の4層が言語化できていれば、ベンダーと同じ前提で話せます。

先に決める4層

目的

何のためのシステムか(例: 転記ミスを減らす)

対象業務

初回で扱う業務を1つに絞る

成功の定義

いつ・誰が・何ができれば成功か

権限とデータ

誰が見てよいか/置いてよい情報か

上から順に言葉にできると、見積と設計の土台になる

  • このシステムで「困っていること」を一文で言える
  • 初回の対象業務が1つに絞れている
  • 成功の定義が「現場の言葉」で書ける
  • 管理者・現場・外部で見える範囲の違いが説明できる

ヒアリングの順番

画面の見た目より、「誰が・いつ・何に困るか」を先に聞きます。順番を守ると、機能の要望が飛び交っても優先順位を戻しやすくなります。

聞く順番(かんたん版)
目的なぜやるか
いまの業務手順の棚卸し
例外・手作業いちばん困っている所
利用者権限の手がかり
成功条件測れるゴール

目的 → いまの業務 → 例外・手作業 → 誰が使うか → 成功条件

MVPの切り方

MVP(Minimum Viable Product)は、簡単に言うと「現場が使える最小の仕組み」です。最初から全部門・全機能を作らず、「いちばん困っている作業」だけがきちんと回る範囲に絞ります。

MVPを切る4ステップ
  1. 01

    1業務に絞る

    例: 見積作成だけ。請求や在庫は次フェーズ

  2. 02

    困っている作業を選ぶ

    転記・二重入力・探し物など、負荷の高い所

  3. 03

    権限は最初から

    見た目より先に「誰が見られるか」を決める

  4. 04

    成功条件を測る

    例: 作成時間が半分、ミス報告が減る

後回しにしてよいこと/いけないこと

初回を小さくするために「後回し」は必要です。ただし、権限・本番アクセス・データの持ち主は後回しにすると、事故と手戻りの元になります。

初回スコープの分け方

後回ししやすい

  • 装飾や細かい見た目
  • 周辺の便利機能
  • 全部門への横展開

後回しにしない

  • 役割ごとの権限
  • 本番・検証の分け方
  • データの置き場所と持ち主

次の一歩

要件が曖昧なままでも、次の3つができれば会話が前に進みます。SHINJIDAIでは、ヒアリングからMVPの切り出しまで、設計段階で一緒に整理します。

今日からできる進め方
  1. 01

    社内1枚メモ

    目的・対象業務・成功条件を短く書く

  2. 02

    範囲を合意

    ベンダーと「初回はここまで」を共有

  3. 03

    小さく作って見る

    現場で使い、次の優先度を決める

よくある質問

要件が固まっていなくても見積は取れますか?

画面一覧や細かい仕様が全部決まっていなくても、目的・対象業務・成功条件があれば概算の土台になります。先に全部を固めるより、範囲を決めて小さく始める方が見積の精度も上がりやすいです。

MVPはどれくらい小さくすればよいですか?

「1つの業務のなかで、いちばん困っている作業」がきちんと回る範囲が目安です。全部門・全機能を初回に入れず、現場が「これなら使える」と感じる最小の流れに絞ります。

権限やログは後からでよいですか?

見た目や周辺機能より先に決めることをおすすめします。後付けは手戻りと事故のもとになりやすいです。発注前の確認項目は、外注前セキュリティのコラムもあわせてご覧ください。

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